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2014年11月23日レクチャー&ピアノリサイタルに向けて(2) Ichiro Kaneko 2014年 8月 6日(水) 23:06
 更に、ショパンは作曲を重ねるに従い、ジャズでいうところのテンションを用いるようになっていった。それは晩年の作品である舟歌作品60などによく見受けられるが、若い頃の作品、たとえばバラード第1番ト短調作品23にもみられる。テンションを用いると、和音の根音がベースにない場合や根音が省略されることによって、和音や調が判断しにくくなる。こういった点を考えると、ショパンの作風は多用な転調とテンションの利用により、調が明確にわからなくなることによる情緒表現を目指したと考えられる。
 彼は1849年に没したがそれを引き継いだのがワーグナーなどである。しかし、ショパンのこういった特徴をつきつめたことによって完全な調性崩壊を作ったのはスクリャービンである。彼はテンションと転調をとことんまで突き詰めた結果、調を特定できない作風を確立した。それは、スクリャービンの晩年、作品番号でいえば58以降である。初期の作品にはショパンの影響が色濃く反映されているが、彼が素晴らしいのは、ショパンの語法を突き詰めた結果、ショパンの情緒とはまったく異なる独特な情緒表現(いわゆる神聖、神秘的なものといわれる)を確立したことである。それは中期の作品、たとえば詩曲作品32ですらすでにそうである。この点が、伝統的な和声の語法を根底から無視して新しい語法を確立したドビュッシーと最も異なることであると考えて良いだろう。しかし、ドビュッシーとスクリャービンに共通点がないわけではない。ドビュッシーは意識して新しい旋法を確立し、スクリャービンは結果として新しい旋法が確立されたという違いはあるが、彼らに共通するのは、「新しい旋法の確立」である。その手法は現代音楽というカテゴリーに属する作曲家達の多種多様な作曲語法の一部、たとえばメシアンやシェーンベルクなどの語法についての発想の源となっていったのである。

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