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2014年11月23日レクチャー&ピアノリサイタルに向けて(3) Ichiro Kaneko 2014年 8月 7日(木) 20:49
 スクリャービンの作品の多くは、速度が一定の状態で速度の変化を表現する。これは矛盾するように思われるが、正確に言うと、1小節の長さを一定にして、1小節を分割する拍子を変化させることで、あたかもテンポが変化しているように聞こえるのである。テンポを一定にすることは、作品全体の構造を明確にし、統一感をもつためにはとても重要である。また、スクリャービンはテンポルバートを素数連符で表現する。つまり、通常、連符というのは2の累乗であるが、3連符のみならず、5連符、7連符などを頻繁に用いる。拍子が3拍子であれば、当然割り切れない。これを正確に表現することによって、結果として「だらしない」「あいまいな」表現が生まれる。
 バロック時代は、付点の長さの比率は「良い趣味」という、多分に口頭伝承的な表現形態によって奏者に委ねられた。イネガリテ(不均等奏法)も同じである。しかし、口頭伝承が地域によって異なる事と、交通網の発達によって異なる民族で発展してきた音楽を演奏しなければいけないことが起こり、口頭伝承が頼りにならなくなった。そのために、記譜は時代とともに厳密になっていった。スクリャービンの記譜が、特にリズムにおいて複雑なのは、彼がイメージした、しなやかなルバートを正確に記譜しようとしたことによる。従って、奏者が音楽的な理由なしに勝手なルバートをすれば、リズムから彼の目指したあいまいさなどが消えてしまうのである。

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