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ピアノ指導者 2015年 9月 6日(日) 21:25
 今年でピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)でクラシック音楽のピアノ指導者として5回目のピアノ指導者賞をいただいた。自分でピアノの生徒を募集したことはまったくなく、さまざまな関係から依頼されて引き受けていた。職場の仕事をこれ以上できない程度までやった残りの時間のうち、更に演奏家としてピアノを練習する時間を除いた時間を充てるので、すべての依頼にこたえることができないことがたびたびあったが、こればかりは仕方ない。
 ピアノを指導していて思うことは、ピアノの指導者は魔法使いや神様のようなものではないということだ。というよりも、保護者や生徒がそういう風に思い込むこと自体がおかしいと僕は思っている。クラシック音楽のピアノを指導するとはどういうことか。もちろん、教える内容は多岐にわたるから、その定義はとても難しいが、正しいと言えることの1つに、クラシック音楽はその名の通り伝統芸能であり、そこには長い歴史によって培われたルール(たとえば、バロック時代の「良い趣味」と言われるものなども含む)がある。このルールを教えることがクラシック音楽のピアノを指導することの1つである。
 だから、たとえば秋山徹也音楽研究所http://homepage3.nifty.com/akiyamatetsuya/lab.htmlで秋山先生が言われているようなことがあるべき指導法の1つである。そして、最終的には、指導者の手を借りず、音源も聴かずに楽譜から自分一人でまっとうな演奏ができるようにするのが指導者としてなすべきことの一つであると思う。
だから、僕はピアノを指導するときに、自分の個人的な趣味を教えない。こう演奏するべきだという場合、それが伝統芸能のどういう基準から導かれるものかが明確なことだけである。それだけで十分素晴らしい演奏になる。困るのは、その説明に、その生徒が知らない音楽用語や作曲理論が必要な場合である。その場合、レッスンの曲を通じてそういったことを勉強することになる。しかし、理解できれば、1箇所だけではなく、その曲の他の部分、また、他の作品にも応用できることなので、最初は時間がかかるが、徐々に時間がかからなくなっていく。
 ピアノ技術を教えることもあるが、先に音楽を正しく認識し、それを表現するために技術をどうするかということが重要である。優れた作品は、いろいろな意味で複雑な構造をしているから、同じような繰り返しがない。従って、単純な繰り返しばかりの練習曲をやっても音楽的に演奏できることにはつながらない。最低限の筋力や敏捷性は必要だが、それだけでは良い演奏はできない。
 クラシック音楽のピアノ指導者とは、伝統芸能の伝承者であって、魔法使いでも神様でもない。

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