昨日は施設コンサートでのエピソードを書きましたが、そういえばある知的障害者更生施設で
こんなこともありました。
園が夏休みに入るので、入所している方は家族と一緒にお食事会をして楽しいひと時を過ごし、
そのあとそれぞれの自宅へ帰る日のことでした。
演奏とともに手拍子や踊り手が飛び出すという、楽しく和やかな雰囲気の中、いよいよアンコールの曲に
入りました。
曲目は確か「上を向いて歩こう」だったと思います。曲が始まるや否や一人の男性がステージに
上がってきて私と手をつなぎ、いきなり踊り始めたのです。
その力の強かったことは今でもよく覚えています。
私は振り回されそうになりながら無心に踊るその人のことを「いつも音楽を聴いて踊ってる明るい人
なんだろうなぁ」と思っていました。
ところが、この男性はその施設に入所して10年以上経つのに、誰とも会話をしたこともなく、まして
ステージで踊るなどということは家族も想像できなかったそうです。彼の障害は自閉でした。
お母さんはもちろん、園の誰もがただただ驚いていました。お母さんははじめて見たそんな我が子の姿に
号泣していたそうです。
もちろんその事実を知って一番驚いたのは私たちですが・・・。
そのあと理事長さんに「音楽療法」の事を聞き、納得した記憶があります。
でも私たちは理屈じゃなく、歌いながら一緒に楽しい時間を過ごせればそれに勝るものはない!
と思って演奏してるだけですけどね。
(一応あとで音楽療法の本を読んでみたのですが、私にはさっぱり意味がわからずちんぷんかんぷん
だったことも事実です)
それにしても音楽の持つ力とはすごい! と改めて感心するばかりです。
こんな素敵な場面に出逢えるから、やめられないんだなぁこの仕事は。つくづく皆さんに感謝します。