散歩をしながら、夫と「今年の旅行先はどこにしよう」という話になった。
80歳までは、と年に一度の海外旅行を続けてきたけれど、
だんだんと長時間のフライトもしんどくなってきた。
2年後に夫が傘寿を迎える。あと2回。潮時かもしれない。
かれこれ20年以上前のことになるけれど、
夫が友人の写真家と企画して地元の旅行会社に持ち込んだ写真撮影旅行は、
今でもいい思い出になっている。
その後、10年ほど続けられたけれど、やはり一番最初に行ったポルトガルの印象が強い。
現地のガイドさんは日本人男性で、とてもユニークな人だった。
長髪、黒シャツ、黒ズボン。ちょっと独特のムードだ。
ツアーメンバーの一人がなんともストレートに「ゲイですか」と聞いたものだから、
みんなドキッとしながら耳をそばだてた。
ガイドさん、澄まし顔で「よくそういわれます」ときた。
実際は違っていて、現地でロマの女性と結婚し、今は別居?離婚?しているとかで、
ツアーの途中、ナザレで娘さんが会いにきて、みんなに紹介してくれた。
16,7歳の目のきれいな黒髪のお嬢さんだった。
手作りツアーのせいか割と気ままにスケジュールを変更ができたのが
面白い思い出になっている。 例えば・・・、
移動中のバスのなかでメンバーの一人が「モンサラスという町があるらしい」と言い出した。
ここからそう遠くない、ということで急遽、寄ることになった。
人口100人ほどのスペイン国境に近い城壁に囲まれた小さな町。
静かな佇まいが印象的だった。
(最近のツアー案内を見ると、今ではもうすっかり観光コースに入っているらしい。)
コスタ・ノバに寄ったのも同じようなことからだった。
メンバーの一人が旅行雑誌かなにかで見た、といい、急遽、立ち寄ることに・・・。
家々の縦縞や横縞の模様がとても粋だ。 ここはもともと漁師町で、
夜、漁から帰った漁夫たちが我が家を間違えないように縞模様を塗ったのが始まりなのだとか。
そんなこんなの中で、ガイドさんが、
引退したら住みたいと思っている町に案内したい、といいだした。
旅も終わりに近づいた頃だ。
ムルトゥーザという何もないただの田舎町。ここで30分ほど小休止した。
集合時間に5分ほど遅れたメンバーがいて、話を聞くと、
道に開いた門から中庭に入り込んで写真を撮っていたら、家の人に声をかけられた。
怒られるのかと思ったら、なんとお茶を振る舞ってくれたという。
のどかのんびりしたいい町でした。
(崩れかけた土塀。でも上部はちゃんと小さなタイルで飾られています。)あのガイドさん、今はもう引退してこの町に住んでるのかな~。
日本には帰らないといってたけど・・・。
思いがけず懐かしい旅の思い出が次々に甦り、
残り2回の海外旅行を大切にしなければ、とあらためて思ったことだった。